一眼レフカメラやレンズの購入を考えている時や、カメラの話をしている時に「焦点距離」「画角」などの言葉を目にすることが多いですよね。
普段あまり聞き慣れない言葉であり数値で表現されるものなので、何となく難しそうだという印象を持っている方が多く、その意味を理解しないままになっていることもあるようです。
もちろん焦点距離や画角を理解をしていなくても写真撮影を楽しめますが、特にレンズの購入を考える時には必要不可欠な知識と言えるでしょう。
この記事では、焦点距離と画角について理解を深めたいと思います。カメラを勉強中またはレンズの購入を検討中であれば、ぜひ参考にしてくださいね。
焦点距離とは
焦点距離とは、レンズを通過した光が交わる点とレンズとの距離のことを言います。
レンズは平面ではありません。中心が膨らんでおり、ゆるやかに外側に向かって厚みが少なくなっていますよね。平行な光がレンズに当たった時、レンズの中心を通る光はそのまま直進しますが、それ以外の部分にある光はレンズの曲線により屈折し、レンズを通過後に後に一点に集まります。その点を焦点と呼ぶのです。
そして、レンズから焦点の距離を焦点距離と呼びます。この焦点は各レンズごとに決められており、その表記は「◯◯mm」という表記です。
焦点距離については、よくイメージがしやすいように虫メガネの集光が例えられます。集光とは、太陽の光を虫メガネで集めて黒い紙を焦がすことです。この実験は小学校で多くの人が経験しているでしょう。
紙を焦がした点こそが虫メガネの焦点であり、虫メガネと紙との距離が焦点距離にあたります。
単焦点レンズとズームレンズについて
焦点距離についてお話をしましたが、焦点距離は全てのレンズに1つしか定められているわけではありません。レンズには単焦点レンズ・ズームレンズという種類があります。
ズーム機能のないレンズを単焦点レンズと言い、名前通り単焦点は1つです。そして、ズームレンズの場合は焦点距離に幅があり、その範囲内であれば自由に焦点距離を選べることになります。
焦点距離の表示方法は単焦点レンズなら「85mm」のように1つ、ズームレンズなら「55-250mm」のような表記になります。55mm〜250mmまで焦点距離の範囲があるという意味ですね。
レンズごとの特長を簡単に説明しましょう。
ズームレンズの特長
自由に撮影したい部分をズームして撮影すれば、余分なものを画像の中に入れなくて済み、構図が自由に決められます。そのため景色の撮影に向いています。
単焦点レンズの特長
レンズ自体の構造がシンプルなため、明るくなり暗所撮影にも対応しやすいでしょう。つまり、最小絞り値が小さいレンズが豊富にあるので、美しいボケが表現しやすいということですね。
また、焦点距離が固定されることで構図が学びやすいと言われており、カメラを初めたばかりの方にもお勧めです。
焦点距離の目安
焦点距離が小さいものを広角レンズ・大きいものを望遠レンズと呼び、それぞれ目安の焦点距離が定められています。
焦点距離ごとのレンズの種類
焦点距離 | レンズの種類 |
20mm以下 | 超広角レンズ |
24mm前後 | 広角レンズ |
35mm前後 | 準広角レンズ |
50mm前後 | 標準レンズ |
85mm〜135mm前後 | 中望遠レンズ |
200mm〜300mm前後 | 望遠レンズ |
400mm以上 | 超望遠レンズ |
表では細かく分割しましたが、50mm前後の焦点距離を標準レンズと言い、標準レンズ以上の焦点距離のレンズを望遠レンズ・標準レンズより小さい焦点距離のレンズを広角レンズと3種類のみで表すことが多いです。
画角について
画角とはどのくらいの角度の範囲が写真に写るかを表しており、焦点距離とセンサーサイズによって変わります。
画角が変わると画像自体のイメージは大きく変わるため、画角によって表現できるものは違うものになるでしょう。
焦点距離と画角の関係
焦点距離と画角には計算式がありますが、代表的なものを紹介しましょう。
焦点距離 | レンズの種類 | 画角 |
28mm | 広角レンズ | 75度 |
35mm | 準広角レンズ | 63度 |
50mm | 標準レンズ | 47度 |
85mm | 中望遠レンズ | 29度 |
100mm | 望遠レンズ | 24度 |
度数が広がっている=数値が大きいほど撮影できる範囲が広いということです。
そのため、この表通り焦点距離が短いほど撮影できる範囲が広く、長いほど撮影できる範囲が狭くなります。
その理由を分かりやすく説明すると、白い紙の中心を長方形に切り抜いたとします。その穴を覗き込んだまま、手を伸ばし紙をどんどん自分から遠ざけてみてください。
穴の中から見える景色は紙が遠ざかるほど見えるものの範囲が狭くなりますね。焦点距離が目と紙の距離・長方形の穴が画角ということです。
画角はセンサーサイズにも関係する
画角を決定する要素は焦点距離だけではありません。カメラに搭載されているセンサーサイズによっても画角は左右されるのです。
センサーサイズの基礎知識も含めて説明します。
センサーサイズとは
センサーサイズとはイメージセンサーサイズの略称であり、カメラに搭載されている画像素子の大きさのことです。
一般的にセンサーサイズが大きいほど多くの画像情報を取り込むことが可能なので、暗い場所での撮影に強くなり、色彩がより豊かになって画質も上がると言われています。
しかし、センサーサイズが大きくなると本体価格も高額になり、カメラ自体も大きくなる場合が多いでしょう。そのため、フルサイズセンサーは各メーカー上位モデルに採用されている場合が多いです。
【センサーサイズの大きさの種類】
- 35mmフルサイズセンサー
- APS-Cサイズセンサー
- マイクロフォーサーズ(4/3型)
上からセンサーサイズの大きい順番に並んでいます。
正確なセンサーサイズはメーカーによって多少違いがありますのでご注意ください。
センサーサイズが画角に与える影響
センサーサイズが変わると焦点距離も変わるため、必然的に画角にも違いが生じます。
基本的に焦点距離はフルサイズセンサーのカメラで使用した場合の数値が表記されているので、それ以外のサイズのセンサーサイズでは違った数字になるのです。
例えばAPS-Cセンサーの場合はレンズの焦点距離✕1.6(メーカーに寄って数値が若干変わります)が正しい焦点距離になります。
そのため、100mmの焦点距離をレンズで指定した場合、使用しているカメラがAPS-Cセンサーなら160mmの焦点距離となり画角もその焦点距離のものになりますね。
自分の好みの画角から焦点距離を考える
焦点距離や画角について理解ができても、いざレンズ選びをしようと思うとどの焦点距離が自分に合っているのか分からなくなってしまいますよね。
そのような時には、自分が撮影したいものや撮影したと思っているシチュエーションを考えましょう。
「さまざまなものを被写体にしたい」と考えている人もいるかと思いますが、ほとんどの人は「趣味の旅行で風景写真を撮りたい」「子供を被写体に撮影したい」「カフェやオシャレなインテリアなどの室内写真が撮りたい」など、メインで撮る予定の撮影ジャンルがあると思います。
自分の撮影したい画像は、どの画角が向いているのかを考えれば最適な焦点距離も分かりますね。
景色や星空を撮影したい
焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)を使用して、広い画面に美しい景色を撮影すればダイナミックな演出ができます。暗闇にも強いので、夜景や花火の撮影にも向いています。
子供を被写体に撮影がしたい・日常の光景を撮影したい
思い出として普段の光景を撮影したり、自分の子供の撮影をする場合には、どのような状況下でも撮影がしやすい焦点距離50mm前後のレンズ(標準レンズ)を選ぶと臨機応変に対応しやすいです。
特に何個ものレンズを持ち歩き、レンズ交換をしながら撮影をするようなスタイルが難しい場面でも標準レンズが活躍するでしょう。
スポーツ観戦や電車の撮影がしたい
被写体に近づくことが難しいものの撮影には焦点距離の長いレンズ(望遠レンズ)を使用します。遠くにあるものを大きく撮影できるので、野鳥観察にも向いていますね。
また、あまり被写体との距離が保てないとプレッシャーを感じてしまう被写体もいるので、ポートレートにも良い場合もあります。
焦点距離によって変わるのは画角だけではない
焦点距離と画角の関係を説明しましたが、焦点距離が変わることによって違いがあるのは撮影できる範囲だけではありません。焦点距離ごとの特長をまとめましょう。
焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)
焦点距離の短いレンズのことを広角レンズと言います。広角レンズのメリット・デメリットとお勧めのシーンを紹介しましょう。
焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)のメリット
- 撮影できる範囲が広く1枚の画像に多くの情報を入れられる
- 手前のものが大きく遠くのものが小さく写るため迫力のある画像になる
- ピントの合う範囲が広くボケにくい
焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)のデメリット
- 画面に入る範囲が広いので撮影したくないものも写り込んでしまう場合がある
- 画像の外側にあるものが歪みやすく、撮影には注意が必要
- ボケの強い写真が撮影しにくい
焦点距離が短いレンズ(広角レンズ)の撮影にお勧めのシーン
- 画面の広さを生かした空の撮影
- 夜空の撮影
- 広大な景色の撮影
- 撮影の距離が確保しにくい室内の撮影
- 実際よりも広く大きく見せたいものの撮影
- 暗い場所での撮影
焦点距離が標準のレンズ(標準レンズ)
焦点距離が50mm前後のレンズのことを標準レンズと言い広角レンズと望遠レンズの中間に位置します。標準レンズのメリット・デメリットとお勧めのシーンを紹介しましょう。
焦点距離が50mm前後(標準レンズ)のメリット
- 人間の視界と近い画像が撮影できる
- 明るいレンズが多いので暗闇に強い
- オールマイティーであり、さまざまな場面で使用しやすい
焦点距離が50mm前後(標準レンズ)のデメリット
- 特徴的な画像が撮影しにくい
焦点距離が50mm前後(標準レンズ)の撮影にお勧めのシーン
- 街歩きの撮影
- ポートレート撮影
- ファミリーフォト
- 複数のレンズを持つ予定がない場合
焦点距離が長いレンズ(望遠レンズ)
焦点距離の長いレンズのことを望遠レンズと言います。望遠レンズのメリット・デメリットとお勧めのシーンを紹介しましょう。
焦点距離が長いレンズ(望遠レンズ)のメリット
- 撮影したい被写体を全面に配置した画像が撮影できる
- 被写体との距離が保てるので被写体に意識されにくい
- 美しいボケを表現できる
焦点距離が長いレンズ(望遠レンズ)のデメリット
- 画面に入るものが狭いので撮影したいものが全て入りきらない
- 焦点までの距離が長いので狭い室内での撮影が難しい
- ボケ強いので絞り調整を誤ると背景の情報が伝わらない場合がある
- レンズ自体が重く大きいものが多い
- レンズ自体が高価なものが多い
焦点距離が望遠レンズ(望遠レンズ)の撮影にお勧めのシーン
- 野鳥の撮影
- 電車などの乗り物を被写体とした撮影
- スポーツ観戦や運動会での撮影
- 強いボケを演出したい場合
- 被写体と距離を保って撮影がしたい場合
まとめ
カメラレンズの単焦点距離と画角についての基礎知識と特長をお伝えしました。可能であれば何種類もの焦点距離のレンズを使用する機会があると、自分の撮影したい画角が分かりますね。
それが難しい場合も、インターネットなどを利用して画角別の画像を見比べるのも良いでしょう。
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