カメラを購入したら、まずオートモードで撮影をする方が多いかと思います。今のカメラはとても高い精度で自動的に撮影スポットの撮影環境を察知し、最適な撮影の設定を導き出してくれるのでオートモードの撮影で不便を感じることはあまりないでしょう。
しかし、それが自分の撮影したい写真かどうかと言うと話が違ってきますよね。カメラが導き出すオートモードはあくまで美しく画像が撮影できる設定であって撮影者の好みまでは配慮できません。
「自分の撮影したい写真は何か違う」または「オートモードの撮影に物足りなさを感じる」のであれば、オートモードを卒業してマニュアルモードの撮影にチャレンジしてみましょう!
オートモードとマニュアルモードの違い
そもそもカメラに用意されている撮影モードについて、その内容と違いを説明しましょう。
カメラの機種によって多少種類と呼び方に違いがありますが、どのカメラにも用意されている撮影モードは4種類。
- プラグラムオートモード(P)
- 絞り優先モード(Av・A)
- シャッタースピード優先モード(TV・S)
- マニュアルモード(M)
撮影モードが変われば自分で設定する項目と、カメラが自動で設定する項目が変わってきます。
自分で設定するべき事項を「手動」・カメラが設定してくれる事項を「自動」として表で説明しましょう。
絞り(F値) | シャッタースピード | |
プログラムオート(P) | 自動 | 自動 |
絞り優先モード (Av・A) | 手動 | 自動 |
シャッタースピード優先モード (TV・S) | 自動 | 手動 |
マニュアルモード(M) | 手動 | 手動 |
プログラムオートモード(Pモード)
撮影する環境に合わせてシャッタースピード・絞りなどを自動で設定してくれます。簡単にきれいな写真が撮影できるのでカメラをはじめたばかりの方にお勧めです。
デメリットとしては、細かな調整ができないので自分好みの画像に仕上げることができないという点があります。
絞り優先モード(Aモード)
カメラの絞り値(F値)を自由に設定でき、シャッタースピードは絞りと撮影する場所の環境に合わせて自動で調整されます。自分で気軽に写真のボケを調整したいという場合に最適な撮影モードです。
テーブルフォトや動かないものを撮影する時や、ボケで仕上がりが左右されやすいポートレートの撮影にも適しています。
シャッタースピード優先モード(Sモード)
カメラのシャッタースピードを自由に設定でき、絞りはシャッタースピードと撮影する場所の環境に合わせて自動で調整されます。
早く動く乗り物・人物・動物を早いシャッター速度ではっきりと撮影したい時や、シャッター速度を遅くしてあえてブレで表現したいなど流し撮りにもお勧めの撮影モードです。
マニュアルモード(Mモード)
絞り・シャッター速度・ISO感度の全てを自分で設定し好みの画像に仕上げることができる撮影モード。
設定事項が多く、慣れるまでは手間がかかると感じるかもしれません。そのため、多くの方がマニュアルモードの撮影は難しそうだと感じているようです。
しかし、その分オートモードの撮影では難しいような独特な世界を表現できますし、どのような環境下でも自分の望む仕上がりの写真が撮影できるようになります。
マニュアルモードの撮影をする前に必要な知識
先に結論を申し上げると、デジタルカメラのマニュアルモードは嫌煙されるほど難しいものではありません。
コツをつかめば習得も容易にできますし、何よりデジタルカメラはフィルムカメラと違うので、その場で何度でも撮影・調整ができるからです。初心者だからオートモードと思わずに、はじめからマニュアルモードで撮影をしても良いでしょう。
ただし、カメラの知識がゼロでは、どうしても理解が難しくなってしまいます。マニュアルモードでの撮影に重要な、絞り・シャッター速度・ISOの3種類の意味を知ることからはじめましょう。
この3つがマニュアルモードで調整しなくてはならない設定になります。
絞り(F値)
絞りはカメラに光を取り入れる穴のサイズを調整する仕組みのことです。
絞りを開くと穴が大きくなるので光がたくさん取り込まれ明るくなり、絞りを閉じると穴が小さくなり取り込める光の量が減って暗くなります。
この穴のサイズは「F値」という数値で表され、絞りを絞るとF値は大きくなり、絞りを開くとF値は小さくなります。
絞りの開け閉めは光の調整だけでなく、写真のピントが合う範囲を増減させるので写真のボケの強弱が変わります。絞りを調整すれば写真の雰囲気を自在に操ることができますね。
光をカメラに 取り込む量 | 多い | 少ない |
ピントが合う範囲 | 狭い(浅い) | 広い(深い) |
絞り | 開く | 絞る |
F値 | F値が小さい | F値が大きい |
ボケ感 | 強い | 弱い |
F値の参考例
【〜F2.8】
- ボケが強くメインの被写体が強調される
- 優しく柔らかい雰囲気の画像に仕上がる
- 光を多く取り入れるので薄暗い場所でも手持ちで撮影がしやすい
【F4〜F5.6】
- ほどよくシャープで背景がボケすぎない
- シャッターチャンスを逃したくない時やじっくり設定をする時間がない時に使いやすい
【H8〜】
- 風景写真などをシャープに隅々まで撮影できる
- 多くの情報を伝えられる
※F8以上の撮影は取り込める光の量が少なくなりますので、撮影環境の明るさをよく考え、必要であれば三脚を使用した方がよいでしょう。
シャッタースピード
シャッタースピードは、カメラのシャッターを押した瞬間にシャッターが開いている時間の長さことを言います。
シャッターが開いている時間が長いほど多くの光がカメラのイメージセンサーに取り込まれ、明るい写真になるということです。
その速度は1/1000秒(0.001秒)や1秒など大きく違いがあり、撮影する環境や被写体または撮影したいイメージによって使い分ける必要があります。
撮影スポットが明るい場所であれば、シャッタースピードが速くなければ、光を取り込みすぎ明るすぎて真っ白な画像になってしまいますし、薄暗い場所であればシャッタースピードを遅くしなくては光が不足して真っ黒な画像になってしまいます。
シャッタースピードの参考例
【1/500秒〜】
運動会・スポーツ・速く動く動物などの動きの一瞬の瞬間を切り取り、躍動感ある写真が撮影できます。滝を撮影すれば水しぶきまで停止した画像になるでしょう。
【1/30秒〜1/60秒】
人間の目は1/60秒で動きを確認しているので人間の視界に近い画像が撮影できます。滝を撮影すれば水の流れが線のように表現されます。
【1/8秒〜1秒】
遅めのシャッタースピードになり、シャッターが開いている時間に撮影者の微動で写真がブレてしまうので、三脚とセルフタイマーなどを使う必要が出てきます。
夜道で走る車を撮影すれば車のライトが光のラインのように表現され幻想的な雰囲気になるでしょう。
【8秒〜30秒】
非常に遅いシャッタースピードで、星を撮影するのに適しています。三脚とセルフタイマーなどを必ず使いブレに細心の注意が必要です。
地球の自転を利用して、星の動きを線で表現したい場合は、さらに長く30分前後のシャッタースピードで撮影します。
ISO感度
ISO感度とはカメラのイメージセンサーの光の感度を言います。ISO感度が高いほど敏感に光を写し取ることができ、ライブハウスや夜景などの撮影がしやすくなります。
しかし、ISOは高すぎるとノイズが増えてしまうという難点があり、撮影条件に合わせてなるべく低いISO感度で撮影することが良いと言われています。
ノイズが発生してしまうISOの値はカメラによって変わりますので自分のカメラのISO上限値を把握しておくと良いですね。
また、先ほど説明したオート撮影モードの設定である4種類の設定とは別にISOの手動・自動を独自に設定できる場合が多いので、マニュアルモードでもISO感度をオート設定にできます。
ISO感度の参考例
【ISO100〜ISO400】
- 明るい屋外での撮影
- 三脚を使った明るい室内での物撮り
- 三脚を使った風景写真
(三脚を使用して動かない被写体を撮影するのであれば、夜間でもISOは低くて構いません)
【ISO400〜ISO800】
- 手持ちのスナップ写真
- 標準的なISO感度
【ISO1600〜ISO3200】
- ゆっくり動くものを夜撮影する時
- 星空の撮影
(星は地球の自転で動いているので、長時間シャッターを開けると星の光が線のようになってしまいます)
【ISO3200〜】
- 室内のスポーツ撮影
- 夜の動体撮影
- ライブ撮影など
マニュアルモードを習得するコツ
絞り・シャッタースピード・ISOの意味を説明いたしましたが、この3つの役割を簡単に表でまとめてみましょう。
設定 | カメラのイメージセンサーへの効果 |
ISO感度を調整 | イメージセンサーの感度を決める |
絞りを調整 | イメージセンサーに光を取り入れる量を決める |
シャッタースピードを調整 | 光をイメージセンサーにあてる時間を決める |
つまり、マニュアルモードでの撮影におけるカメラの調整は基本的にカメラのイメージセンサーにあてる光の調整を目的としているということです。
そのため、カメラの設定=露出の調整と言われています。
マニュアルモードでは、この絞り・シャッタースピード・ISO感度のバランスを取りながら、イメージセンサーに取り込める光の量を最適にすることで理想の画像を形にしています。
マニュアルモードの調整手順
マニュアルモードをはじめて使う時に、調整が楽に行えるようになるコツをお伝えしましょう。
①ISO感度の仮設定と試し撮り
撮影する場所の明るさで一番低いISO感度に一度設定してみましょう。慣れればこの作業は省いて構いません。
晴天の日中の野外であればISO100〜200、明るい室内ならISO400前後、薄暗い室内ではISO600前後など、自分がよく撮影を行う環境のISO感度は覚えてしまいましょう。(上記のISO感度の例を参考にしてください)
②絞りを決める→シャッタースピードの調整
まず好みのボケ感になるように絞りを調整してシャッタースピードを合わせていきます。
- 明るすぎる場合→シャッタースピードを速くする=取り入れる光の量を減らす
- 暗すぎる場合→シャッタースピードを遅くする=取り入れる光の量を増やす
動きのあるものを撮影する場合は、ブレを防ぐため上記と逆の発想で「シャッタースピードを決める→絞りの調整」と考えても良いでしょう。その場合の調整方法は下記となります。
- 明るすぎる場合→絞りを絞る(F値を上げる)=取り入れる光の量を減らす
- 暗すぎる場合→絞りを開く(F値を下げる)=取り入れる光の量を増やす
③必要であればISO感度の見直し
絞りとシャッタースピードの調整で明るさが不足するようならISO感度を上げます。ISO感度は低いほど画質が良いので、無駄に上げすぎないようにしましょう。
この②〜③の作業を反復することで微調整をして希望の画像に仕上げていきます。
つまり
- シャッタースピード・絞りで好みの画像を決める
- その好みの画像が撮影できる感度までISO感度を上げる
必要な量の光をカメラのイメージセンサーに取り込むために、シャッタースピードと絞りで帳尻を合わせ、それでも光が足りないのであればISO感度を上げてイメージセンサー自体の感度を上げるという作業になります。
なぜISO感度は最終手段とするかと言えば、何度も記載しますが、ISO感度は低いほど画質が良いものなので、可能であれば最小数値で撮影するのが好ましいためです。
マニュアル撮影のポイントと注意点
マニュアル撮影のコツを説明しましたが、あまり忠実になりすぎるのも良くありません。いくつか注意事項をあげておきます。
ISO感度を気にしすぎる
大きく引き伸ばして現像したり、写真の一部をクローズアップしたりしない限り、一般的な写真の用途ではISO100やISO200にこだわる必要はありません。
はじめから厳しい制限を設けてしまうと調整に時間ばかり掛かってしまいますし、楽しく撮影ができません。
ISO600程度までは気にせずに設定して良いでしょう。そして、薄暗い場所で子供を撮影するなどの撮影環境としては難しい場所での撮影では、ノイズなどを気にせずブレない数値までISO感度を上げてしまいましょう。
スナップ写真では特に、多少画質が悪くても被写体がきれいに映らなくては意味がありません。
被写体を長時間待たせてしまう・シャッターチャンスを逃す
まずは物撮りや、待ってもらう必要のないものでマニュアルモードの撮影の練習をしましょう。
スナップ写真などで相手を長時間待たせてしまったり、シャッターチャンスを逃してしまうようであればマニュアルモードにこだわらず、オートモードでの撮影をした方が良いです。
実際にカメラ上級者の多くは絶対にオートモードを使用しないというわけではありません。撮影環境やタイミングによってオートとマニュアルを使い分けているのです。
まとめ
マニュアル撮影の方法やコツをお伝えしました。シャッタースピード・絞り・ISO感度の意味と関係を知ることで、この3つが写真にどのような影響を及ぼすのかを理解できたかと思います。
そしてこの3つを足したり引いたりすることで好みの画像に仕上げることができます。はじめはとても難しいと感じてしまうかもしれませんが、回数をこなすうちに意識的にではなく感覚的にこの作業が行えるようになり、調整の時間もどんどん短くなるでしょう。
練習は必要ですが、手に取るように自分の成長を感じられるはずですので、積極的に多くの撮影を楽しんでくださいね。
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